音楽レビューvol.13

ebisawa0722006-10-23

嵐「アオゾラペダル



ジャニーズ事務所に所属するアーティストの曲に名曲が多数存在するのは周知の事実だが、この曲は最近のジャニーズのヒット曲の中でも群を抜いてすばらしい作品だと思う。


今作は作詞作曲がスガシカオ(僕の大学の先輩にあたる)によるもの。


本来、自身の音源としてリリースするはずであったらしいが、「ハチミツとクローバー」挿入歌の話がきたことから嵐に提供することになったという。


スガシカオといえば、「夜空のムコウ」の作詞者としてあまりにも有名だが、自身作曲の作品で世の中に浸透している曲は意外に少ない。

シングルヒットは少ないものの、業界からの評価は絶大なものであるしアルバムをだせばチャート上位に必ず顔を出す売れっ子である。

(俗にいうアルバムアーティストと言うことであろう。浜田省吾やここ数年の奥田民生もその類にあてはまる)


なぜ彼に世の中に浸透するようなヒット曲がないかについて、僕なりの意見を書こうと思う。

まず第一にあげられるとしたら「声」という障害がある。もちろん、ハスキーでエロティックな雰囲気を漂わせる彼のボーカルはあまりにも魅力的だが「j-pop」を歌うのにあまり有利な声の持ち主ではないのである。

どんなにポップな歌を歌っても必ず「スガシカオ」とゆうグレイなカラーに染まりその曲の持っているポップ感を殺してしまうのだ。(もちろん、そこがファンをひきつける魅力でもある)

そして第二に、これが一番本質的な部分でもあるのだが、彼は世間一般で言うポップ
な曲をあまりかかない。(あえてあまり書いてないのだと思うが。)


すばらしい音楽の才能をもっているにもかかわらず「売れる曲、浸透しえる曲」という視点から見ると少し世の中からずれたアーティストなのである。


今回の「アオゾラペダル」は歌詞、メロディともに万人をひきつけられるすばらしいものであるが、本人がボーカルをとりリリースされてもここまで浸透されなかったと僕は思う。

スガシカオのすばらしい楽曲に、嵐のつたなくはあるが、ポップネスに満ちたボーカルが重なり初めてこの曲は万人を惹き付ける魅力を帯びたように思う。


つまり「スガシカオ」と言うアーティストはどこまでも煮え切らないところに最大の魅力を持つ稀有ですばらしい存在なのである。


前置きが長くなったが、「アオゾラペダル」について。


まず歌詞だけを見ると彼女を自転車にのせて走っているというシンプルな内容であるが、今時こんなシンプルな内容をここまで切なく描けるミュージシャンを僕は見たことがない。


些細な事をいかに第三者に伝えられるかがj−popの醍醐味であると僕は思っているのだが、この曲はその醍醐味を究極にいかしたpopソングである。

そして何より、バンドのアレンジがとにかくすばらしい。イントロを聞いただけで「これはいい曲だ」と人を思わせるマジックをもった王道のサウンドに仕上がっている。


アオゾラペダル」のような曲が売れると(売り上げは確か30万枚弱。実際もっと売れてもいい曲だと思う)停滞気味と呼ばれている「j−pop」市場もまだまだ捨てたものじゃないなとしみじみ思う。